水沢形成外科医院

TEL:0197-47-4700 FAX:0197-47-4701 休診日:木曜・日曜午後・祝日 診療時間:9:00~12:00 14:00~18:00

施術概要

「切り傷」「擦り傷」「手術」「にきび」などさまざまな原因で生じた「傷痕」をより目立ちにくくする治療で、「刺青除去」も含めて広い意味でのいわゆる「傷直し」となります。形成外科での保険診療と密接に関連し、言わば通常の形成外科診療と美容外科診療をダイレクトに結びつける窓口に相当する領域でもあり、瘢痕拘縮などの機能障害を伴う「傷痕」を初めとして保険適用となる場合があります。

当院ではレーザーによる治療と手術の2つの方法を採用しており、ケミカルピーリングは行っておりません。レーザーと手術いずれの方法による場合でも、術後スキンケアやテーピングが大切な役割を果たします。

1. レーザー・ピーリング

レーザーを使用し人工的に皮膚に「計算されたキズ」を入れ、それが再生される過程で、明瞭な境界を伴う目立つ「傷痕」を、境界不明瞭でより目立たない正常皮膚に近い「傷痕」にする方法です。「にきび痕」など、一つ一つは小さいながらも広く散在することにより全体としては目立つ「傷痕」の治療などに有効です。

麻酔はクリーム麻酔が中心で、必要に応じて局所麻酔注射を行うこともあります。所要時間は照射範囲にもよりますが、たいていの場合30分以内で終わります。治療後は上皮化(照射したところに新たな皮膚が再生される)まで原則としてご自宅で軟膏処置を行って戴きつつ、定期的な外来通院にて経過を注意深く追って行きます。ダウンタイムは1週間から2週間が目安となりますが、その後も少なくとも3~6か月間は十分な紫外線および摩擦対策と、過度のストレスを避けた正しいスキンケアがとても大切になります。起こり得る合併症としては、治療に伴う炎症遷延による色素沈着が主に挙げられれます。対応としてはスキンケアおよび内服外用による保存的治療のほか、半年以上改善が認められなければ、色素沈着に対するレーザー治療をお勧めする場合もあります。

2. タトゥー・レーザー

Qスイッチ・ヤグレーザー照射による治療を主にお勧め致しております。1064nmと532nmの二つの波長を選択でき、照射エネルギーを調整することにより黒~褐色の刺青だけでなく赤や黄のカラー刺青にも対応出来ます。例えばハガキ1枚程度以上のサイズがある刺青などで、切除後に縫い閉じることが困難もしくは不可能な場合や、植皮術の傷痕を避けたい場合には、レーザー照射による治療が第一選択となります。

麻酔は基本的にクリーム麻酔を行いますが、局所麻酔注射を要することもあります。所要時間はごく小さいものでは数分で終わりますが、大きなものでは1時間程度を要する場合もあります。そして治療回数ですが、一般的に2~3か月の間隔で5~10回以上の照射が必要になることをあらかじめご理解ください。ダウンタイムは1週間程度であり、レーザー照射後の一般的注意事項として、日に当たる部位では治療期間中の日焼け対策とスキンケアがとても大切です。除去が困難な部分に対しては切除縫縮を行ったり、フラクショナル・レーザーやアブレーション・レーザーによる治療を併用することもあります。起こり得る合併症としては、炎症後色素沈着や、肥厚性瘢痕・ケロイドを生じる可能性があります。

3. 切除縫縮

形成外科・美容外科としては最も基本となる手術です。線状や楕円形など切除した後に縫い閉じることが出来る「傷痕」や、事情により期限があるなど、一度の治療で除去したい場合、この「切除縫縮術」が第一選択となります。

麻酔は「傷痕」の大きさや場所にもよりますが、ほとんどの場合で局所麻酔の手術となり、手術時間も30分から1時間で終わるケースが多いです。手術翌日から創部もシャワー浴ができます。抜糸は1週間後を目途に行います。抜糸後も3~6か月間はスキンケアやテーピングを行うことが、よりよい結果を得るためには大切となります。6か月経過した段階でさらに「傷痕」を目立ちにくくしたい場合、フラクショナル・レーザーによる治療を引き続き行う方法も効果的です。起こり得る合併症としては、術後血種や感染のほか、肥厚性瘢痕・ケロイド、瘢痕拘縮が生じる可能性があります。

4. 皮弁形成

「傷痕」や「刺青」の切除後に、そのまま縫い閉じるのでは正常な皮膚に負担がかかり過ぎてまた目立つ「傷痕」となったり、顔の表情や関節の動きなどに悪影響を及ぼすことが危惧される場合には、周囲の正常皮膚を上手く利用して傷を閉じる「(局所)皮弁形成術」を行います。

麻酔や手術時間、術後の注意事項は「切除縫縮」と変わるところはありません。術後安定期でのフラクショナル・レーザーによる追加治療は、「切除縫縮」よりも術創が複雑になりがちな「皮弁形成術」ではさらに効果的なことが多いです。

5. 植皮

「傷痕」や「刺青」の切除後に、そのまま縫い閉じることはもとより、部位による組織量の制約などの理由で「皮弁形成術」も難しい場合には、ご自身の皮膚を別の場所から採取して移植する「植皮術」を行うことがあります。形成外科領域では広範囲熱傷などの治療に常用される方法ですが、採皮部の傷痕が追加されること、植皮部の傷痕も「パッチワーク」様となりやすく、一般的に申し上げて仕上がりは決して美しいものではない場合が多いことから、美容手術としては極力避けたい方法ではあります。美容診療としては止むを得ない状況により行う言わば「最後の手段」であり、この方法の選択にあたっては、コンサルティング外来で十分にご相談戴くことをお勧め致します。

麻酔は局所麻酔で可能なことも多いですが、面積が広い場合は全身麻酔をお勧めすることもあります。「植皮術」には「全層植皮術(皮膚全層を移植)」と「分層植皮術(皮膚を薄く部分的に採取して移植)」の2通りの方法がありますが、植皮部がより美しく整容的に望ましいのは「全層植皮術」です。採皮部はそのまま縫縮出来るというメリットもあり、「傷直し」の手術としては原則として「全層植皮術」をお勧めしています。ただしこの方法は対応出来る面積に一定の限りがあり、それを超える場合には「分層植皮術」を選択せざるを得ません。分層採皮創は創傷被覆材の貼付などにより皮膚が再生されますが、色素沈着・脱出や質感の相違、あるいは肥厚性瘢痕(傷痕が元の傷を超えない範囲で盛り上がる)などにより、全層採皮創に比べて目立ってしまうことが一般的です。

植皮部はガーゼを糸で固定(タイオーバー)します。固定の除去は1週間後に行いますが、その後もしばらくは軟膏処置の継続を必要とすることがあります。上皮化後のお手入れですが、日の当たる部位では十分な遮光と保湿が必要です。起こり得る合併症としては、術後血種や感染が植皮片の生着に直接影響を及ぼしやすく、植皮片壊死に伴う皮膚潰瘍を生じた場合、その回復に長期を要する場合があります。その場合の傷痕は、肥厚化や色素沈着など、概して整容的に思わしくないものとなります。